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ファイルベースワークフローの課題と、知られざる"DIT"という職業

Posted by MONSTER DIVE

どうもはじめまして。
DJと名乗りながらも、映像制作を担当しております。
学生時代から数えると15年以上、映像という分野に触れておりますが、最近けっこう、いや、かなり困っているのが"撮影データのやり取り"

  • 「撮影データ、お渡ししますね!」「これ、うちのMacで開けないんですけど?」
  • 「あっ!フォルダ構造いじったら編集ソフトに取り込めないじゃん!w」
  • 「Macでは開けたんですけど、Windowsでは開けないっす」
  • 「Final Cut Proでは読み込めるのに、Premiere Proではできない〜」
  • 「うちのWindowsではHDDマウントしないんですけど」
  • 「FAT? What??」(←スルーして下さい)

ほんのちょっと前までは、撮影テープをポンとお渡しするだけで、相手が再生機器さえ持っていれば何の苦労もなく再生が出来たものです。

しかしファイルベース全盛になった今、相手にファイルをただ渡すだけでは、再生どころかファイルすら開けないなんてことも...

みんなが夢見た、脱・テープ。
デジカメの画像を渡すような感覚で、動画も便利になると思っていた"ファイルベースのワークフロー"。

どうして面倒なことになってしまったのでしょうか。

ファイルベースワークフローの現状

(1) ビデオフォーマットの乱立

ファイルベースのビデオカメラは、実はこんなにも多くのビデオフォーマットが存在します。

  • AVCHD(AVCCAMと呼んでるメーカーも...)
  • XDCAM
  • mov (EOS MOVIEなど)
  • P2HD
  • JVC mov/mp4記録
  • Canon MXF
  • ProRes
  • SRMASTER
  • XAVC
  • 各種RAW記録
    などなど...

ざっと挙げただけでも、これだけあります。
私ももうわけわかんないです。w

SD時代はほぼベーカムかDVかの二択、ということを思うと、HD全盛でもうすぐ4K時代にも突入しそうな現代は、ビデオフォーマットの戦国時代です。

しかも大多数はあくまで、ビデオカメラ用に策定された記録方式のせいか、PCとの親和性が非常に悪いです。
国民総PC時代に、どうして??
DSLRカメラでよく使われている「mov」は、QuickTimePlayerさえインストールされていれば即再生可能ですが、その他のビデオフォーマットは専用ソフトが無いと、プレビューのための再生もできないのです。
この辺りは次の(2)へと繋がっていきます。

(2) 映像技術とITリテラシーの両立が必須に

今までは映像専用ハードウェアを持ち、映像技術さえ知っていれば、なんとか完パケまで作ることが出来ましたが、ファイルベースとなると様々な難関が立ちはだかります。すなわち、PCやソフトウェアに関する知識が無ければ、映像データを上手に扱うことが出来ない結果に...

撮影データの保存方法

ファイルが壊れること無く、完璧にメモリから複製すること、その後の編集業務を効率良く行うことが出来るようにデータを整理することが必要です。

映像編集ソフトが撮影したデータのビデオフォーマットに対応しているか

映像編集ソフトの種類やバージョンによって、読み込めるビデオフォーマットが異なります。
厄介なのが「AVCHD」形式。長尺だと2GBに分割されて記録されますので、分割されたファイルの結合に対応している編集ソフトの選定が必要です。または、分割されたファイルを結合するために各カメラメーカーが用意しているユーティリティソフトの準備も必要です。

データのやり取りに使うHDDのファイルフォーマットに関する知識
(MacまたはWindowsもしくは両方でマウンドできるかどうか)

ファイルフォーマットによって、そのデータが読み書き可能か否かが変わってきます。
Macでよく使われている「HFS+」形式は、Windowsでは読み込めません。Windowsでよく使われている「NTFS」形式は、Macだと書き込み不可・読み込みしかできません。
Mac/Windowsの両方で読み書き出来るファイルフォーマットは「exFAT」や「FAT32」になります。なお、「FAT32」は1ファイルあたり4GBまでの容量制限があり、長尺の映像だと余裕で4GBに達してしまうため、書き出しに失敗なんてことも。。。

納品方法によって異なる、コーデックや圧縮方法の選択

ファイルベースでの納品では、納品先の環境によって「wmv」指定だったり「H.264/MPEG-4 AVC」だったりと様々です。ビットレートの上限指定もあります。また関係者が確認するためのプレビュー用ファイルも、相手の再生環境を考慮して出力しないと、データを渡しただけでは「再生できません!」なんてことに繋がるので注意が必要です。

そんなわけで誕生しつつある"DIT"という職種

このように複雑なファイルベースワークフローをわかりやすく誘導し、安全に管理することに特化した"DIT"という職種が誕生しつつあります。

DIT(ディット)とはDigital Imaging Technichianの略でして、撮影データのバックアップや管理はもちろん、適切な機材の選定やカメラごとに違う特性をいかに引き出すか/編集時にどう仕上げるかを関係者にアドバイスし、撮影〜編集までの架け渡し役を担うのも仕事のひとつです。
特に最近はデジタル一眼レフやRED・Blackmagic Cinema Cameraなど従来のビデオカメラに囚われないカメラが登場しており、ピクチャースタイルの設定や記録方式・Logの扱い方などカメラによってキャラが違いますし、そのすべてを制作スタッフやカメラマンが網羅するのも大変です。

そういった意味ではDITとは、従来のビデオエンジニアとしての知識に加えて、PCやソフトウェアにも明るく、しかも機材の選定や映像制作のTipsを場面場面で提案出来る、"コンサルタント"のような存在なのかもしれません。

実際の現場では...

まだ誕生しつつある新しい職種なだけあって、仕事内容もワークフローも一概には確立されてません。
多くの現場では、撮影データの管理方法は人それぞれ、といったところでして、しかし撮影データは欠損や事故から絶対死守しなければならないもの。

そんななか、去年〜今年にかけてDITのための管理ツールがいくつか発表されておりますので、チラッとご紹介します。

Adobe Prelude

図1 - Adobe Prelude

http://www.adobe.com/jp/products/prelude.html

公式サイトによれば"ファイルベースの収録素材の取り込みから、ログ記録、トランスコード、ラフカット作成までをスピーディーに行える"とのこと。
私も実際にひとつ旧式の「Prelude CS6」で使ってみましたが、1つのソフトに管理を集約出来るという、Preludeさえ起動すればすべての読み込んだファイルを見れるという環境は、やはり便利です。

また上記画像のように、付箋感覚でメモ代わりのマーカーを置けたりサブクリップも作成可能。もちろんこれらのマーカーは「Premiere Pro」にも反映します。撮影したその日のうちにOKカットの抽出しておく、といった作業に便利です。

図2 - Adobe Prelude

またメモリーからPC/Macへ転送時に、巡回冗長検査(CRC)によるバイナリーチェックを行うことが出来ます。正常にコピーされているかどうか目視で確認出来ることは、管理者として大変重要な点です。

図3 - Adobe Prelude

もちろん他のコーデックにトランスコードも可能!
「ProRes」や軽いオフライン用のデータに変換できます。

Red Giant BulletProof

http://www.flashbackj.com/red_giant/bulletproof/

2013年9月に発売されたばかりの新しいソフト。
映像ソフト用プラグインメーカーの「Red Giant」が開発しているだけあって、Adobe Preludeにはない簡易カラーグレーディングも出来ます。現場で仕上がりのイメージを出しやすいでしょう。

YoYottaID

こちらはバックアップに特化したソフトです。
差分バックアップや元データが入っているメディアを書き込み禁止に出来たりと、シンプルなので試しに使ってみたいですね。

ファイルベースのことなら、映像とITの両方に明るいMONSTER DIVEまで!!!

長くなりましたが、これからは完全にファイルベースワークフローの時代です。
また新しいコンセプトのカメラが次々と登場しては映像制作のノウハウは変遷します。そして4K時代に突入し、ビデオフォーマットもどんどん追加されていくかと思います。OSや映像編集ソフトも進化(バージョンアップ)が続いていきますので、それに伴ってPC/Macのワークフローも変わっていくかと思います。

MONSTER DIVEは、常に最新技術に臨機応変に対応してますので、ファイルベースワークフローで何かお困りの場面がございましたら、ぜひお気軽にDJ KOTOKUまでご相談いただければと思います。

というわけでなんだか小林旭さんの『自動車ショー歌』を思い出してしまう、DITのお話でした。
♪キャロルと忘れてDITさん〜
・・・ダットサンですね。

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