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心理的安全性、あるいは猫の話

Posted by Takanori Shimizu

どうも、ディレクターのtknrです。
コーポレート室で広報や採用企画を担当しています。

前回はずいぶんと趣味に走ってしまったので、今回は主務であるコーポレート業務について書いていきます。ちなみに『Frostpunk』は、世界0.3%のユーザしか得ていないトロフィーを複数獲得しましたので、あまりもう語りません、燃え尽きました。(でもまだたまに起動します)

猫を飼っている話

数年前から家族に猫を迎えました。
僕は動物が本当に苦手で、幼少期に亀を飼ったところ冬眠から出てこなかった程度の経験しかなく、身構えていましたが、生粋の猫派である相方の影響でペット可の物件を選び、保護猫を引き取ることになったのです。

猫(雑種)

猫との対面(オンボーディング)

共働きのため子猫を育てる時間的余裕はなく、1歳程度の成猫がやってくることになりました。
保護猫ですから、はじめて我が家に彼を迎えたときには、若干まだ警戒心があるのかなと感じましたが、早速、ガツガツとカリカリを食べてすぐにブリブリした様子をみてまずは安心した記憶があります。

猫といえば遊び道具。きっと準備力のある親であれば、まるで初孫を迎えるかのように豪勢なグッズを用意しておくのかもしれませんが、うちではしばらくヨドバシカメラの紐で遊ばせていました。それがハマったのか、居心地が良いと認識してもらえるまで時間はかからず、初夜から同じベッドで寝るくらい距離感が縮まりました。

猫との対話(セッション)

以降、いくつもの気づきがありました。まず、猫は生理的なものであるということ。
人間同士のコミュニケーションにおいては毎日同じような表情をつくろうことが出来ますが、彼は猫なので、日々、なついたり噛んだりギャップが激しい。また、毎日、家に帰ると彼がいるので、まるで家具のように風景として見えてしまうことがありますが、しっかりとリレーションを継続するために、会話をし、意図的にスキンシップをとる時間を設けています。

動物と暮らしている人には当然の話かもしれませんが、仕事と就寝の繰り返しで生きてきた成人にとって、これは、生活態度の激変です。

チームメンバーはすべて猫である

現在ではコーポレート部門を主担当にしている僕ですが、もともとWebディレクターとして職歴を重ねていた頃は、実に理想家で完璧主義だったように思います。出来て当たり前、昨日より今日のほうが良いアウトプットが出来て当たり前、いま出来なくても明日は出来て当たり前。システムエンジニア出身ではありませんが、シゴトとは、プログラミングのように改善されるべきものだと無自覚に認識していました。

ところがいくつもの壁にぶち当たります。キャリアの引退も頭をよぎる日々、迎え入れた猫。その頃に読んだ経営書にも書いてありました。「人間を資源として扱う以上、ビジネスとは生理的なものであり、感情や不確実性のもとにマネジメントを考えなくてはならない」。モノゴトが上手く回らなくなったとしても、それは当然の流れ、プロセスの一部であり、昨日ゴロゴロとなついていた猫が今日はやたらと噛み癖があるように、なんも理由がなくても状況は変化するものだという世界の理を、なんと、知ることができたのです!

同僚、上司、取引先。すべての関係者は生物であり、それはつまり猫です。何かのひょうしで不機嫌かもしれないし、パフォーマンスが落ちているかもしれない。チームメンバーはすべて猫なのだと考えれば、何か不都合があっても何ら動じる必要は無いのです。

そして、チームメンバーは猫であると考えたとき、また、チームから見れば自分も猫なのです。

自分自身も不確実な存在であると捉えると、それを前提にした向上策がいくつも見えてきました。
今回はそんな話をしていきます。

チームの心理的安全性を意識しよう

チームのパフォーマンスを高めるには、心理的安全性の確保が前提であると、Googleが提唱しています
ひらたく言えば、チーム内において、

  • 「なんでそんな失敗したんだ!」といってミスを非難する
  • 「お前がそれを言うな!」などと意見にフタをする
  • 「これも知らないわけ!?」という姿勢で質問を受け付けない

このように不寛容な対応をする人がいると、離職率は上がり、収益性も低下する、つまりビジネスのパフォーマンスが悪くなるという説です。

これはおおいに納得できる話で、僕自身、過去を振り返ってみると、自分の発言や行動についてチームメイトからの肯定感を得られているときのほうが、良いパフォーマンスを発揮してきたように感じます。それは上司・同僚をはじめ、取引先など社外の人間関係においても同様です。人間が親しくできるのはせいぜい5人まで、という説もありますが、上限ある交流リソースを適切に配分すること、そしてその関係値を自由で前向きな前提に設定できると、ストレスの低減や積極性の向上といったメンタル面での好調はもちろん、プランニングやアウトプットが良質になることは、これまでのキャリアで実感があります。

スポーツで例を挙げれば、2010年代前半、ドイツ・ブンデスリーガのボルシア・ドルトムントの活躍を想起します。監督が先鋭的な戦術を用いたうえで強烈な扇動力をもってチームを鼓舞し、決してトップタレントではなかった若手・中堅人材が相互に刺激しあい、国内2冠に輝くなど好成績を記録。彼らはチーム内でライバルでありながら、オフ・ザ・ピッチでの交流も盛んだったと聞きます。などと書き始めると、当社のフットボール・フリークたちからツッコミがありそうなので割愛しますが、当時、チームに埋もれた輝く才能が眠っていたことは前提として、明らかな好調を実績として残せたのは、戦術家であると同時に稀代のモチベーターと評される監督のチーム作りによって生み出された良質な人間関係が一端にあるのではないかと思います。これらの逸話については『サッカーキング』の記事によくまとまっていました。

ドルトムント来日時のスタジアム


では、ビジネスのチーム作りにおいて、心理的安全性を高める・維持するためには、何が必要か。

まずは先人の知恵を知ろう

経営学や心理学を学んだ身ではありませんので、ここから記す内容は、すべて僕の経験をベースとしたバイアスのかかった話です。チームのパフォーマンス向上策を求めてこの記事をご覧になった方には、ぜひ、以下のような先人の知恵、正しい知識をまずはご覧ください。

どれもわかりやすくまとまっていますね。
では、コーポレート室に配属されて2年半、いま思う持論を2つ、ご紹介します。

入社時のオンボーディングが超重要

新しく加わるメンバーをカルチャーフィットまで導く考え方として、「オンボーディング」すなわち「搭乗」という捉え方があります。流行といってもいいかもしれません、Tech系の企業ブログによく登場するトピックですね。

メンター制度、シャッフルランチ、メンバー同士で自己紹介するLT(ライトニング・トーク)の開催、OJT(On the Job Training)など、施策は様々ですが、これらを実施すれば良いということではなく、重要なことは、その名の通り「搭乗」を成功させるために手を尽くすことにあります。

それは、新しいメンバーをお客様としておもてなしすることではありません。
飛行機のフライトと同じように、これからしばらく時間を共有するという意識を、お互いに持つことだと考えています。

快適性をシェアするためにはマナーが求められますし、安全を保つために必要なルールがあります。

新メンバー/現職の双方が、モノゴトの前提をお互いに共有する、そのすり合わせのために社内交流や研修を実施するんだ、という認識を持つことが重要です。ランチに行ったからといって、ただ雑談を楽しむだけでは、心理的安全性が確立できるものではありません。友人・知人だから気兼ねない関係とは限りませんよね。シゴトという共通ミッションを見据えて、お互いの思考・距離感を見つける「目的意識」を持って、接しましょう。

意図のある雑談、アイスブレイクがとても重要です。それを誘発する施策とは何か?
僕もHR担当として、日々、企画に参加しています。

アイスブレイクの風景

withコロナ時代のオンボーディング施策を試行錯誤

当社では、コーポレート室のメンバーと各事業部兼務のメンバーが「社内コミュニケーションWG(ワーキング・グループ)」というチームをつくって、日々、オンボーディングの施策を企画・実践しています。ほんの数年前まで20人に満たない社員数で、昼夜を問わずモノづくりに熱狂してきた小さな会社ですから、チーム作りのノウハウはまだまだ足りていませんが、ひとつずつ取り組んでいます。

目下の悩みとしては、これまで準備してきたオンボーディング施策が、軒並み、実施できていないこと。そう、コロナ禍です。対面でのコミュニケーションを重視する社風のなかで、どのような入社支援ができるか、WGメンバー一同、頭を抱えています。ですが、そんななかでも、非同期の時間軸で楽しめるよう「社内ラジオ企画」をスタートしたり、OJTに使用する資料を手厚く準備したり、取り組みを続けています。このあたりはまたの機会に詳しく!

面談による相互フィードバックが不可欠

エンゲージメントを高める方法として、定期的な面談、特に1on1(1対1)のミーティングが効果的と言われています。有名なケースではヤフーの取り組みが挙げられます。

評価を伝える一方的な「面談」ではなく、メンバーの成長を促すためにマネージャーがセッションを通じて「支援」するという考え方のようです。

MONSTER DIVEでも、週次の定例ミーティングとは別に、

  • 入社1ヶ月面談(上長)
  • 入社1.5ヶ月面談(コーポレート室)
  • 入社3ヶ月面談(上長)
  • 半期面談(上長)
  • 通期面談(代表)

といった形で、複数回、膝を突き合わせて話をするタイミングを持っています。
しかしながら、これは完全に私見であり部を代表する意見ではないのですが、当社はまだまだこの「面談施策」について不得手と感じています。あくまで日々の業務の延長で会話する場、または上長とメンバーというフォーマット感が強く、いわゆる「セッション」という領域まで、コミュニケーションの精度を高められた例は少ない印象です。

この課題は当社と同じ規模感のチームの方であれば、きっと同感いただけるはずです。コーポレート部門といっても事業部業務を一部兼務しており、またマネジメント層といってもプレイングマネージャーです。潜在能力を試されているのはメンター側も同様。なかなか、メンバーひとりひとりに向き合って、フラットで整理された思考回路を提供できません。これはどうやらシリコンバレーにおいても同じケースがあるようです。

上司が部下と1対1で定期的な対話の時間をもつ人材育成の手法だが、「1on1に時間が取られて仕事ができない」「面談と何が違うの?」といった戸惑いの声も、現場から聞こえてくる。
1on1ブームの意外な背景と思わぬ弊害(lifehacker)

また、面談ではなく「エンゲージメント測定ツール」のようなシステム(wevox, Geppoなど)で相互フィードバックを促すことも考えられます。日々の業務の負担にならず、組織改善に導く手法を引き続き探っていきたいと考えていますが、まず、すぐにできる「1on1改善のコツ」があります。

会議室の風景

より効果的な1on1セッションのためにできること

シンプルですが、アジェンダを必ず持ち寄ることです。

できれば事前にシェアしたうえで当日を迎えます。
お互いに面談で何について意思疎通を図りたいと感じているのか、明確にしておくだけでも、高い濃度のコミュニケーションが実現できるでしょう。「あれ、この人は...、何を言いたいんだろう...」と察し合う時間が最も疲労を感じます。メンバー側にとっても、当日になって「上長を目の前にして話しづらい」といった気苦労が低減されるはずです。

僕自身、過去にはそのようなセッションを上長と繰り返しました。たくさんあるトークテーマのなかから、15分,30分というリミットにどの話題を持ち込むのか。その選別を知るだけでも、メンター側としてはメンバーへの理解が深まります。

そして、冒頭で挙げたように心理的安全性の前提が必要です。

話しづらいトピック、主に言えば待遇・環境・荒れた案件の振り返りなどですが、そういった会話について、もし結論はネガティブだとしても、お互いに会話は肯定感からはじまることが重要です。メンター側、メンバー側、両者が安心してアウトプットする場を作れるといいですね。

まとめ

コーポレート室の業務は「HR」(Human Resources)のなかでも「ER」(Employee Relations)の側面が重要です。上場企業が株主との対話に注力するように、すべての企業はメンバーとの関係性の構築について継続的な努力が不可欠。良いスパイラルが生まれるように、これからもアイデアを出していきたいと考えています。

生物が苦手、人間が不得手だった僕が、そんな業務に携わらせてもらっているのですから、猫の影響力は偉大ですね!

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