令和6年(2024年)4月1日から、障害者差別解消法の改正により、国や地方公共団体などに義務付けられている合理的配慮の提供が、民間の事業者も義務化されています。
合理的配慮を的確に行うため、環境の整備が努力義務となっており、ウェブサイトの場合ではJIS X 8341-3:2016に準拠したウェブサイトを作り、ウェブアクセシビリティを確保することがこれに当たります。
(出典:https://www.gov-online.go.jp/useful/article/202310/2.html)
ウェブアクセシビリティに関しては、画像へのALT設定やキーボード操作対応なども含め対応できることが多くありますが、今回はWEBディレクター目線で、代表的なUD(ユニバーサルデザイン)フォントとその特徴をまとめてみました。
UDフォントは、すべての人にとって読みやすく、使いやすいデザインを意識して作られています。例えば、ロービジョン(弱視)やディスレクシア(読み書き障害)を持つ方にとっては、次のような困難を抱えています。
ゴシック体は形が省略されており判別しづらい
明朝体は形状の強弱によってストレスを感じることがある
また、年配の方や視力が弱い方にとっては、次のような困難があります。
ぼやけて見える状態では他の文字との区別がつきづらい
今まで特に気にせず日常生活を送っていましたが、言われてみると、メガネ生活を送る自分でも思い当たる節があります......。
そのため「すべての人にとって使いやすく」を目指すUDフォントでは以下の特徴が挙げられます。
では、いくつかの代表的なフォントを紹介していきます。
ロービジョン(弱視)やディスレクシア(読み書き障害)に配慮したデザインのフォント。読みやすさについてのエビデンスも得たフォントだそうです。自分は年々書籍の文字が見づらく感じていましたが、実際にUDデジタル教科書体で組まれた本を読むと、文章に集中でき、とても読みやすくて驚きました。
細いウェイトは優しい印象を与え、太いウェイトは力強さとポップな印象を持ち、幅広い用途に適しています。ユーザーが長時間閲覧することを想定したサイトに適しています。
視認性とクラシックなデザインから、フォーマルな文書や長文のテキストに最適です。落ち着いた印象なので、しっかりと読ませる読み物ページなどでの使用がおすすめです。
家電製品の表示用文字として視認性を高めるため、2006年にパナソニック株式会社と共同開発され、世界初のユニバーサルデザインの視点を持ったフォントです。紹介したのはゴシックですが、丸ゴシックから明朝までひととおりのシリーズが豊富にあります。
いくつかのフォントをおすすめしましたが、UDフォントに変えれば万事解決というわけではありません。人それぞれ困っている点やフォントの特徴の感じ方は異なります。また、どれだけ適したフォントを使用しても、字間や行間の設定によって読みやすさが変わることも考慮する必要があります。
WEBやデジタルデバイスではフォントサイズの変更・ダークテーマの切り替えも可能なため、多くの人にとって読みやすく使いやすい環境を提供できる可能性があります。また、既存のフォントも「明朝体は読みづらいから良くない」というわけではなく、フォントの特性を理解したうえで、どのように使うか、どのように配慮するかが重要です。
今回のブログを書いていく中で、改めて、サイトの特性やターゲット設定、目的に応じたデザイン設計の重要性を感じました。
ユニバーサルデザインについての視点を持つきっかけになった本を紹介させてください。
奇跡のフォント 教科書が読めない子どもを知って―UDデジタル教科書体 開発物語
高田 裕美 著
書体デザイナーの高田裕美さんがUDデジタル教科書体を生み出すまでを描いたノンフィクションです。デザイナーとしてのご経験からフォントの作成方法やフォントの開発秘話までが描かれています。個人的には朝の連ドラでドラマ化してほしいほど、熱くて面白く、奥深い内容です。
もしご興味が沸いた方はぜひ読んでみてください。