こんにちは! MEDIAプロダクション事業部RIDE HI編集部スタッフの中澤です。
先にアップされたRIDE HI編集長・小川が書いたとおり、RIDE HIは創刊1周年を迎えました。
新しいことを始めるのは大変なことですが、その分やりがいがあり、楽しい時間を過ごせたと実感しています。
もちろん、RIDE HIに携わってくださった内外の関係者の皆さんあっての現在だと思いますし、何より、雑誌やWebを見てくださっている読者の皆さまのおかげです。
本当に感謝です! ありがとうございます。
さて、今回は私が普段乗っているバイクでもあり、BMWの伝統的なエンジンについて少し触れてみます。
ボクサーツインエンジン(水平対向2気筒)を搭載するR100RS。このバイクは[RIDE HI最新刊](https://amzn.to/3u8c71w)で試乗した1989年型。このエンジンは、刺激はないもののライダーの操作に忠実に反応する。重心が低く、軽快に曲がることができる
私が所有しているのは、ドイツのメーカーBMWのバイクです。見てのとおり、とにかく大きなフェアリングが特徴的なR100RSという1983年型の少し古いバイクです(写真のR100RSはRIDE HI最新刊で試乗している1989年型で、実は型が異なります)。すでに38年が経過している古いバイクで、さすがに新車当時に手に入れて......ではなく、10数年前に中古で手に入れたものです。
1980年代のバイクブーム時代を知る世代の方であればわかると思うのですが、その当時は日本製バイクの進化が著しく、エンジンの馬力もどんどんハイスペック化されていた時代です。R100RSの60〜70psという馬力はいかにもロースペック......正直いって見た目もシャープさに欠けたもっさりした印象で、まったく興味の対象にはなりませんでした。
そんなR100RSに興味を持ち始めたのは、2000年代にBMWのワンメイク誌に携わってからのこと。他メーカーのバイクと比較試乗しても、猛烈な加速をするとか、鋭く曲がり始める、などのわかりやすい特徴がない......とにかく安定志向が強い地味なバイクという印象しかなく、その頃は、BMWの良いところなどさっぱりわからずでした。
しかし、世代が変わっていたその当時の最新型に乗るようになり、同時に根本(ネモケン)に、ことあるごとに"ボクサーツイン"エンジンの素晴らしさを説かれていく中で、その言わんとしていることが徐々に理解できるようになりました。そうなると、一世代前のBMWはどうなの? ということが猛烈に知りたくなってR100RSを手に入れたのです。
いまでこそ、並列4気筒、並列2気筒、単気筒など、様々なエンジン型式を持つバイクをラインナップしているBMWですが、もっとも伝統的で"らしさ"を象徴しているのが"ボクサーツイン"や"フラットツイン"などと呼ばれる水平対向2気筒エンジンです。
シリンダーが車体の左右に水平に張り出しているのがひと目でわかりますが、このカタチは1923年に登場したBMW初のバイクから使われています。加えて、後輪を駆動するのにチェーンではなくシャフトドライブを組み合わせる構成も変わっていません。
BMW初のバイクが1923年に登場したR32。このモデルからボクサーツインとシャフトドライブが採用され、以降のボクサーツインモデルはこの構成が維持されている。排気量は486cc、8.5馬力だった
シリンダー内を往復しているピストンが対向して動いていることから"ボクサー"と呼ばれる。車体の低い位置に搭載され、安定性と軽快性をバランス良く実現している
このエンジンはシリンダーが横に寝ているため、他の型式のエンジンに比べて、縦方向の嵩がなく、車体の重心位置も低くなります。左右に張り出しているから、ヤジロベイのようなバランスで安定した動きをする一方で、バイクならではの左右へバンクさせる動きも軽快に行えます(クランクシャフトが"縦置き"であることなども大きく影響しているのですが、長くなるのでここでは割愛させていただきます!)。カーブが連続する日本のワインディングでも、ちょっとした身体の重心移動で軽快に曲がることができます。
そして、ボクサーツインエンジンの特性ですが、先に書いたように高回転まで回るなどの刺激を味わえる類のものではありませんが、スロットル操作に対する反応がとても忠実であることが美点。ジワッと開けたり、パッと大きく開けたときのスロットルの動きと、加速が直結していてとても扱いやすいのです。
バイクのエンジン特性は、開発の狙いや意図、あるいは物理的な排気量の大小などによって、ある低い回転域では反応が遅れがちでも高い回転域になるとリニアになったり、その逆のパータンなど様々にあります。
ボクサーツインの場合は、このスロットル操作に対する加速の遅れや唐突さが少なく常に一定な感覚です。あくまで乗り手の操作に忠実に反応してくれるわけですが、ここまで徹底されているバイクはそうはありません。BMWのバイクは、昔から長距離ツーリングでも疲れず快適に走れると言われてきましたが、こうしたライダー本位のエンジン特性が大きく影響しているのです。
ちなみにボクサーツインの現行モデルも、こうしたライダー本位のバイクづくりが継承されています。エンジンについていえば、扱いやすさはそのままによりスムーズさが増し、よりパワフルに進化しています。穏やかさの中にも、古いモデルにはなかった"刺激"も味わえるようになっています。
ボクサーツインエンジンを搭載する現行モデルは4車種。ネイキッドのR1250R、スポーツツアラーのR1250RS、ツアラーのR1250RT、アドベンチャーのR1250GS(大容量タンクを持つアドベンチャーもある)と、用途に合わせて選ぶことができる。
今回の記事では、自ら所有するBMWのボクサーツインを例としましたが、他にも伝統的なエンジン型式を使い続けているメーカーがあります。改良し使い続け、そのエンジン型式だからこそのフィーリングやメリットを生かして進化させているわけですが、それらはそのメーカーの個性をもっとも表しているといえるのです。そして、それぞれのメーカーのバイクの面白さにもつながっているわけです。
バイクに興味を持ち始めたばかりの頃には、エンジン型式なんて考えたこともないと思います。ただ、こうしたメーカーの個性といえるエンジンのことを知るだけで、バイク選びやバイクに乗ることがもっと楽しくなるはずです!
雑誌「RIDE HI」や「RIDE HI WEB」では、こうした個性的なエンジンを搭載するバイクの話題はもちろん、そもそもエンジン型式ってなんのこと? といった基本的な内容についても紹介しています。また、最新刊ではR100RSで九州を走った記事も掲載しています。ぜひご覧ください!
最新刊では、R100RSで九州・大分県にある絶景エリアを走ってきた記事を掲載しています。
Photo: 高島秀吉
Photo: BMW