昨年の10月に立ち上げたバイクメディア『RIDE HI』の編集長・小川です。『RIDE HI』は、雑誌、Web、YouTube、サーキット走行会、この4本の柱を軸に時代にあったスタイルでバイクの楽しさをお届けしていくメディアです。
実は昨今のコロナ禍で、ソーシャルディスタンスを保ちやすいバイクに注目が集まっています。知り合いが教習所に行っても「教習開始は1〜2カ月後になります」とのこと。メーカーによってはバイクの販売も好調で、中古車、そしてパーツや用品の動きも良いところが多い印象です。
バイクには色々な楽しみ方があります。ツーリング、オフロード、カスタムにサーキット走行などなど。RIDE HIではこのすべての楽しさをお届けしたいと思っていますが、僕が30年来没頭しているのはスポーツライディング。
「バイクはスポーツなんですよ」というと大抵は「え?」という顔をされます。
確かに大型バイクで優雅にツーリングしている姿は、スポーツに見えませんね。風を感じて、美しい景色を見て、美味いモノを食べる。「どこがスポーツなんだ?」という声ももっともです。でも、ツーリングもサーキットも市街地を走行するのも僕にとってはスポーツそのもの。元々僕は身体を動かすことが大好きで、野球、バスケットボール、剣道、スキーなど道具を使うスポーツを積極的に行ってきました。いま考えるとその延長線上にバイクもあるのです。
バイクという道具をいかに上手く操るか、それを約25年間追求し続けています。二輪しかないバイクは当たり前だけれど、ライダーがバランスを取らなければすぐに倒れてしまいます。走行中は常にバランスを取り続け、ライダーが積極的に動くほど、応えてくれる道具がバイクなのです。そこがバイクでスポーツすることの面白さで、25年間ひたすらやっているけど本当に飽きない。それどころか今も新しい発見の連続なのです。
創刊号の種明かし。表紙のライダーは僕。場所は筑波サーキットコース1000。80km/hくらいでコーナーを曲がり、バイクを起こして加速する瞬間の絵。この時点で100km/hくらい。身体をイン側に預け、スロットルは全開。リヤタイヤが滑らないように体重を車体の後ろ側に加勢中。ハガキ1枚分しかないタイヤの接地面に大パワーをかけるため、身体で荷重を増やさないとタイヤが滑り出すかもしれない......タイヤが滑らないよう、全神経を後輪の動きに集中。この後は前論が浮かないように前側に身体を持っていきます。
RIDE HI主催のサーキット走行会「バイクギャザリング」や今でもたまに参戦するレースの翌日は、身体のどこかが筋肉痛になります。レースだったら100%全身筋肉痛。200kgあるバイクで、200km/h出し、ブレーキングしてバイクを減速させます。さらに寝かして向きを変え、バイクを起こしながら立ち上がる。ストレートでは身体を伏せて、ブレーキングでは身体を起こしてと、コーナーの度にバイクの上で腕立て伏せをしているような感じ。耐久レースだとこれを1時間繰り返します。サーキットを走っていると1秒として身体が同じ体勢でいることはありません。
世界GP最高峰クラスを戦うマルク・マルケスのインスタグラムより。このフィジカルがないと今の最高峰のレーサーは扱えないのです。昔はこんなにムキムキのライダーは1人もいなかったけれど......バイクの4ストローク化、大パワー化、大排気量化が乗り方を変えていっているのです。
200psのバイクもいまはお金さえ出せば、誰でも買える時代になりました。そんなバイクでサーキットを走るとコースによっては300km/hに到達。車のように何にも守られていないバイクは、身体剥き出しで300km/h!「バイクは危ない......」バイクに乗っていない人ほど、そんな先入観を抱きます。確かに、もしもいまの時代に誰かがバイクを発明し、認可を得ようと思っても「危ない」の一言で無理かもしれません。でも、ライダーが「こうしよう」「こう扱おう」という意思を持って乗っていれば、バイクはまったく危なくありません。ゴルフや野球だって市街地でやったら危ない。自転車や登山もそう、ルールやモラルがなければなんだって危ないのです。
公道は当然法定速度。それでも思い通りに曲がる、停まるを実践します。路地を曲がる時に5cmフロントタイヤが思ったラインを通らなかったり、信号で停止線から少しでもズレると気持ちわるい......。扱おうという意識と、考えて乗ることで、安全性、そして面白さがぜんぜん変わってきます。
だから市街地でも先ほどの「こう扱う」を常に心がけます。停止線で思いどおりに止まるために前後ブレーキの配分などを考えるのです。加速していくギヤチェンジのショックはどう操作したらなくなるのか......丁寧に操作してもショックは消えないから困ったものです。僕にとって市街地を走るのもサーキットでコーナーを曲がるもの、バイクへの取り組みは方はまったく同じ。25年間、「どうやったらもっと上手くバイクを扱えるか」をひたすら考えています。
バイク歴50年以上のメディア事業部長である72歳のネモケン(根本 健)がボソッと言いいます。「まだ気づきがある、まだ上手くなってる......」「え? そうなの? 極めてないの?」と思うけれど、確かに"満足の行くコーナリング"って一度も味わったことがないんですよね。本当にバイクって奥が深い。だからバイクは一生をかけて楽しめる趣味なのだと思っています。
バイクブーム到来!せっかくだからこれからバイク趣味を楽しむ人も、すでに楽しんでいる人も「長く、永く」バイクを楽しむためにも「扱う」こと意識していただければと思います。RIDE HIの様々なメディアを使って、バイク趣味を長く続けるためのコツをお届けしていくのでよろしくお願いいたします!